「やぁ、まこちゃん」
「あら、横田さん」
「元気かい?」
「こっちの台詞よ!アメリカからいつ帰ってきてたの?」
「あぁ、ついさっきさ。真っ先に君に会わないといけないから、急いで来たのさ」
「まぁ、何を習ってきたのかしらホント。せっかくだから、お上がりなさいよ。お父さんにも挨拶して頂戴。」
「はは、もちろんさ」
昭和54年
西暦1979年
世は、おかしな流れに引っ張られつつも、22世紀に夢を乗せたアニメ「ドラえもん」が始まったり
かと思えば、第2次石油ショックという源流の荒波に揉まれる日々で
まこと横田は、久々に出会った。
「おう、たっくん久々だな!どうだいアメリカってのは?」
「おじさんその呼び方やめてくださいってば。もう40のオジさんですよ僕は」
「あら、そんなことこれっぽっちも思ってないくせに」
「こらこらまこちゃん変なことは言いっこなしだよ」
「変なことじゃないですよーだ」
「まぁーたくお前達は、いつになったらケンカしなくなるのかね。」
「これは仕方のないことですから」
「えぇそうよ。横田さんが謝ってくれたら済む話しなんだから」
「まぁまぁ。たっくんは今日泊まっていくんだろ?まこがご馳走を用意してるよ。昨日から張り切って仕方ねぇのって」
「お父さん!!」
「おーと。出かける予定を思い出しちまった。後はお若いお二人でイソイソしておくれよ」
横田を迎え入れる酒盛りは
夜遅くまで続き
月も落ち着いたころ
「まこちゃん」
「横田さん」
「風ひくよ」
「ええ、けど風がきもちいいの。」
「そうか」
「横田さん、アメリカどうだった」
「あぁ、刺激的なものが多かった。だから、疲れたよ。」
「そうなのね」
「うん」
「ねぇ」
「うん」
「私、謝ってくれるまで許すつもりないから」
「あぁ」
「 」
「わかってるよ。」
「 」
「なにをわかってるの」
「わかってる」
「なにをわかってるの。」
「なんでこんな楽しい日に。お父さんがあんなにも幸せな日に。お母さんがいないの」
「まこちゃん」
「わたし、これでも考えたのよ。無い頭必死に使って、考えたの。」
「どうすればよかったのか。どうしたらいいのか」
「けど、結局…涙が邪魔をするの」
「横田さんは、わかるの?」
「アメリカで、あのことを思い出して、泣いたりしたの?そんなの…馬鹿よ。」
「まこちゃん!」
横田を置いて、走り去るまこ
アメリカへ行く前
横田は約束をした
それは、横田自身も、忘れることのできない、約束を。
〜5年前〜
完